大腸ポリープ(便潜血陽性・体重減少・貧血)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

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大腸ポリープ

大腸ポリープ(便潜血陽性・体重減少・貧血)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

サマリー(時間がない方はこちらをどうぞ)

大腸ポリープは、大腸の最も内側にある粘膜が局所的に増殖し、腸管の内腔に向かって隆起した病変の総称です。大きく分けて、将来がんになる可能性を秘めた「腫瘍性ポリープ(腺腫など)」と、がん化するリスクが極めて低い「非腫瘍性ポリープ(過形成性ポリープなど)」に分類されます。初期段階では痛覚神経を刺激せず、出血も伴わないため、自覚症状はほぼ皆無です。

大腸がんの大半は、正常な粘膜から突然がんが発生するのではなく、良性の腺腫が数年単位の時間をかけて遺伝子変異を蓄積し、悪性化(がん化)する「腺腫がん連鎖」という経路をたどると考えられています。そのため、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)でポリープを早期に発見し、がんになる前に内視鏡的に切除してしまうことが、大腸がんを未然に防ぐ最も確実かつ直接的な予防策となります。

症状について

大腸ポリープそのものが特異的な症状を引き起こすことは、大半のケースにおいて存在しません。

・無症状:数ミリから1センチメートル程度の一般的なサイズのポリープは、便の通過を物理的に妨げず、痛みも生じないため、完全に無症状です。

・出血に伴う症状(血便・便潜血陽性):ポリープが2〜3センチメートル以上に成長すると、硬い便が通過する際の摩擦によって表面の粘膜がこすれ、微量な出血を起こすことがあります。これが健康診断の便潜血検査で陽性となる主な原因です。直腸やS状結腸など、肛門に近い部位の大きなポリープから出血した場合は、便の表面に赤い血液が付着する血便として自覚されることがあります。

・便通異常および腹痛:極めてまれですが、数センチに及ぶ巨大なポリープが腸管を塞ぐと、便秘や下痢を繰り返すことがあります。また、ポリープを先端として腸が腸の中に潜り込む「腸重積」を引き起こし、激しい腹痛を伴う腸閉塞状態に陥るケースも報告されています。

病気の概要

大腸の壁は多層構造をしており、ポリープは最も内側の「粘膜」の上皮細胞が異常増殖したものです。顕微鏡で見た組織学的な特徴によって、病態は以下の2系統に大別されます。

1. 腫瘍性ポリープ(腺腫)

大腸ポリープの約80%を占めます。細胞の遺伝子異常(APC遺伝子の変異など)によって無秩序に増殖する性質を持ち、放置すると時間経過とともに一部の細胞が悪性化し、大腸がんへと進行する「前がん病変」です。

2. 非腫瘍性ポリープ

過形成性ポリープ、炎症性ポリープ、過誤腫性ポリープ(若年性ポリープなど)が含まれます。粘膜の加齢変化や慢性的な炎症の修復過程で細胞が過剰に増殖したものであり、原則としてがん化するリスクは極めて低いと考えられています。

病気の特徴

大腸ポリープにおける病態生理学的な最大の特徴は、前述の良性腫瘍ががん化する「腺腫がん連鎖(adenoma-carcinoma sequence)」です。

また、近年医学的に極めて重要視されているのが「無茎性鋸歯状病変(SSLSessile Serrated Lesion)」と呼ばれる特殊なポリープです。これは従来の腺腫とは異なり、BRAF遺伝子の変異などを伴う「鋸歯状経路(serrated pathway)」という別のルートで急速にがん化するリスクを持ちます。SSLは大腸の奥(右側結腸)に発生しやすく、平坦で周囲の粘膜と同じ色をしており、表面が粘液で覆われているため、通常の内視鏡観察では非常に見逃されやすいという厄介な解剖学的・形態学的特性を持っています。

原因・背景

大腸ポリープ(腺腫)が発生するメカニズムには、生活習慣(環境要因)と遺伝的要因が複雑に絡み合っています。

・環境要因:動物性脂肪の過剰摂取、赤肉(牛・豚など)や加工肉の多量摂取、食物繊維の不足といった食生活の欧米化が、腸内環境を悪化させ、胆汁酸の代謝異常を通じて粘膜細胞の遺伝子変異を強力に促進します。また、肥満、過度な飲酒、喫煙も腺腫の発生リスクを独立して上昇させることが疫学的に証明されています。

・遺伝的要因:親族に大腸がんや大腸ポリープの患者さんがいる場合、発症リスクが有意に高まります。また、「家族性大腸腺腫症(FAP)」という特定の遺伝性疾患では、10代から大腸に無数の腺腫が発生し、放置すればほぼ100%大腸がんを発症することが知られています。

検査で分かること

ポリープの発見、正確な種類(腫瘍性か非腫瘍性か)の鑑別、およびがん化の有無を評価するため、以下の検査をおこないます。

・便潜血検査(免疫法)

ポリープからの微量な出血を捉えるスクリーニング検査です。ただし、出血していないポリープは検出できないため、陰性であってもポリープが存在しないという客観的証明にはなりません。

・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)および生検

診断において不可欠な絶対的検査です。大腸の内部を直接観察し、ポリープの有無、位置、大きさ、および形態(有茎性、無茎性、表面型など)を評価します。

・画像強調観察および拡大内視鏡観察

NBIBLIといった特定の波長の光を用い、ポリープを数十倍に拡大して観察します。表面の微細な細胞の模様(ピットパターン分類)や毛細血管の構造(JNET分類)を解析し、「切除すべき腺腫か」「放置してよい過形成性ポリープか」「すでにがん細胞が混じっているか(早期がん)」を、組織を採取することなくその場で瞬時かつ高精度に鑑別します。

治療方針について

治療の基本原則は、「大腸がんへ進行するリスクのある病変(腺腫、SSL、およびがんを疑う病変)を、内視鏡を用いて物理的に完全に切除すること(クリーンコロンの達成)」です。

1. コールドスネアポリペクトミー(CSP)

現在、10ミリメートル未満の小型の腺腫に対する世界的な標準治療です。高周波電流(熱)を使わず、特殊な金属の輪(スネア)でポリープを周囲の正常粘膜ごと機械的に縛り切ります。熱による組織の損傷がないため、術後の出血や大腸に穴が開く(穿孔)リスクが極めて低く、非常に安全性の高い治療法です。

2. 内視鏡的粘膜切除術(EMR)

10ミリメートル以上の大きなポリープや、平坦な病変(SSLなど)に対する標準治療です。ポリープの根元の粘膜下層に生理食塩水を注射して病変を人工的に浮き上がらせ、スネアをかけて高周波電流で焼き切ります。

3. 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

20ミリメートルを超える巨大な平坦病変や、すでに早期がんが疑われる病変に対しておこなわれます。専用の電気メスを用いて、病変を粘膜下層から広範囲に一層で剥ぎ取ります。高い技術を要しますが、どれほど大きな病変でも一括で切除できるため、正確な病理診断と再発防止が可能となります。

4. 経過観察

画像強調観察などで「小さな過形成性ポリープ」と確実に見極められた病変は、がん化のリスクが極めて低いため、切除による不要な合併症リスクを避けるためにそのまま経過観察とします。

よくある質問(Q&A)

Q.ポリープを切除するときに痛みはありますか?

A.大腸の粘膜には痛覚を感じる神経が存在しないため、電気メスで焼き切る場合でも、コールドスネアで切り取る場合でも、切除そのものに痛みを感じることは解剖学的にありません。

Q.切除したのち、食事や運動の制限はありますか?

A.あります。切除後の傷口から出血することや、熱が加わった組織が弱くなって穿孔(穴が開くこと)するリスクを避けるため、術後約1週間は、激しい運動、長時間の入浴、アルコールの摂取、および腹圧がかかる動作を控えていただく必要があります。食事も消化の良いものを中心としていただきます。

Q.一度ポリープを切除すれば、もう大腸カメラはうけなくてもよいですか?

A.ポリープができやすい腸内環境や体質(遺伝的背景)は変わらないため、別の場所に新たなポリープが発生する可能性が常に存在します。また、微小な病変が時間経過とともに大きくなって発見されることもあります。そのため、切除で腸内を綺麗にした(クリーンコロン)のちであっても、医師の指示に従い、年単位での定期的な大腸内視鏡検査を継続していただくことが、大腸がん予防の条件となります。

受診の目安

大腸ポリープは自覚症状が全くないため、「便秘や下痢になった」「便に血が混じった」といった症状があらわれた時点では、すでにポリープが巨大化している、あるいは進行した大腸がんへと悪性化している可能性が示唆されます。

そのため、症状が出るのを待つのではなく、40歳を超えたら無症状の段階から、定期的に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をうけることが唯一最大の防衛策となります。

万が一、健康診断の便潜血検査で「陽性」と判定された場合や、肉眼で血便を確認した場合は、ポリープからの出血や大腸がんの存在を強く疑うべき客観的なサインです。これらを「痔のせいだろう」と自己判断して放置することは極めて危険であるため、速やかに消化器内科を受診し、大腸内視鏡検査による客観的な評価をうけてください。