好酸球性食道炎(胸焼け・のどのつかえ・飲み込みにくい)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

ヘッダー画像

好酸球性食道炎

好酸球性食道炎(胸焼け・のどのつかえ・飲み込みにくい)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

サマリー(時間がない方はこちらをどうぞ)

好酸球性食道炎(EoE:Eosinophilic Esophagitis)は、アレルギー反応に関与する白血球の一種である「好酸球」が食道の粘膜に大量に集まり、慢性的な炎症を引き起こす比較的新しい概念の疾患です。本来、健康な人の食道には好酸球は存在しませんが、食べ物や吸い込んだアレルゲン(抗原)に対する過剰な免疫反応が起こることで発症します。代表的な症状は、食べ物を飲み込む際の胸のつかえ感(嚥下困難)や、肉の塊などが食道に詰まって動かなくなる「食片圧入(しょくへんあつにゅう)」です。

逆流性食道炎と症状が似ていますが、胃酸を抑える薬だけでは治りにくいのが特徴です。また、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどを合併している患者さんが多い傾向にあります。長期間放置すると、食道の壁が硬く線維化し、食べ物が物理的に通らなくなる後遺症を残すため、胃カメラ(内視鏡)で組織を採取して早期に確定診断をつけ、薬物療法や食事療法による長期的なコントロールをおこなうことが極めて重要です。

症状について

好酸球性食道炎の症状は、食道の粘膜が炎症によって腫れ上がり、さらに進行すると食道そのものが硬く狭くなる(線維化・狭窄)ことによって引き起こされます。

・嚥下困難(食べ物がつかえる):最も頻度が高く、特徴的な症状です。特に肉やパン、ご飯などの固形物が胸の奥(胸骨の裏側)に引っかかるような感覚が生じます。食事の際に、無意識によく噛むようになったり、食べ物を胃に流し込むために大量の水を飲むようになったりするのが初期のサインです。

・食片圧入:つかえ感がさらに悪化し、食べたものが食道の途中で完全に詰まってしまう状態です。強い胸の痛みや、唾液すら飲み込めずに吐き出してしまうといった激しい症状を伴い、内視鏡で緊急に詰まった食べ物を取り除く処置が必要になることがあります。

・胸やけおよび胸痛:胃酸の逆流がなくても、食道の炎症そのものによって胸やけや、締め付けられるような胸の痛みを感じることがあります。逆流性食道炎と診断されて胃薬を飲んでも改善しない「難治性の胸やけ」の背後に、好酸球性食道炎が隠れていることが少なくありません。

・小児特有の症状:子どもが発症した場合、つかえ感を言葉でうまく表現できないため、食事に極端に時間がかかる、食べるのを嫌がる、嘔吐する、原因不明の腹痛を訴える、体重が増えない(発育障害)といった形で症状があらわれることがあります。

病気の概要

人間の消化管において、胃や腸の粘膜には外敵から身を守るために普段から少量の好酸球が存在していますが、食道の粘膜(重層扁平上皮)には、健康な状態であれば好酸球は1つも存在しません。

好酸球性食道炎は、この「本来好酸球が存在しないはずの食道」に、特定の抗原(アレルゲン)が繰り返し曝露されることで、免疫システムが誤作動を起こす病態です。

具体的には、食道粘膜のバリア機能が低下した状態において、食物などの抗原が侵入すると、免疫細胞(Th2細胞など)が異常に活性化し、インターロイキン(IL-4IL-5IL-13など)と呼ばれるサイトカインを大量に放出します。このサイトカインの働きによって、血液中から食道粘膜へと好酸球が強力に呼び寄せられ、密集して慢性的なアレルギー性炎症を引き起こします。

病気の特徴

好酸球性食道炎の最大の特徴であり、医学的に最も警戒すべき点は、慢性的な炎症が食道の「リモデリング(構造的変化)」を引き起こすことです。

好酸球からは、周囲の組織を破壊し、線維化を促進する強力なタンパク質(MBPなど)が放出されます。この炎症が長年続くと、食道の柔らかい筋肉や粘膜下層がカチカチのコラーゲン線維に置き換わってしまいます。これにより、食道の動き(蠕動運動)が失われるだけでなく、食道が竹の節のように硬く狭くなる「輪状ひだ」や「狭窄」が形成され、不可逆的(元に戻らない)な通過障害を引き起こします。

また、内視鏡で観察すると、食道に特異な形態変化がみられます。

・縦走溝:食道の粘膜に、縦に走る深い溝が何本も形成されます。

・白斑:好酸球の死骸が集まった小さな白い斑点が、粘膜の表面に多数付着します。

・クレープ紙様粘膜:粘膜が極端に脆くなり、内視鏡が少し擦れただけで、クレープ紙が破れるようにペリッと薄く剥がれて出血する特異な脆弱性を示します。

原因・背景

好酸球性食道炎を引き起こす直接の引き金(トリガー)は、主に「食物抗原」と「環境抗原」です。

1. 食物抗原

食事として摂取した特定のタンパク質が、食道粘膜に直接触れることでアレルギー反応を引き起こします。原因となりやすい食物として、牛乳(乳製品)、小麦、卵、大豆、ピーナッツなどのナッツ類、魚介類(シーフード)の6大アレルゲンがよく知られています。

2. 環境抗原(吸入抗原)

花粉、ハウスダスト、ダニ、カビなどを吸い込み、それが唾液とともに食道に飲み込まれることで炎症を引き起こすケースもあります。花粉の飛散時期に食道の症状が悪化する患者さんも存在します。

3. 遺伝的・体質的背景

患者さんの多く(5070%)は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎といった「Type 2Th2)炎症」と呼ばれるアレルギー体質を背景に持っています。また、食道粘膜の細胞同士をつなぎ合わせるタンパク質の遺伝的な弱さ(バリア機能障害)が、抗原の侵入を許す根本的な原因になっているという研究も進んでいます。

検査で分かること

好酸球性食道炎の確定診断には、症状の問診に加えて、内視鏡検査と顕微鏡による病理組織検査を組み合わせることが「絶対条件」となります。

・上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)および生検

前述した縦走溝や白斑、輪状ひだといった特有の所見がないかを観察します。しかし、見た目だけでは逆流性食道炎と区別がつきにくい場合や、肉眼的には正常に見えるケースも存在します。そのため、異常の有無にかかわらず、食道の上部、中部、下部の複数箇所から組織を少しずつかじり取る(生検)ことが不可欠です。

・病理組織検査

採取した食道の組織を顕微鏡で観察し、「高倍率の1視野(HPF)あたり15個以上の好酸球が密集していること」が確認できれば、好酸球性食道炎と確定診断されます。

・血液検査

血液中の好酸球数の増加や、IgE抗体の値が高くなっていないかを確認します。特定の食物アレルギーの抗体を調べることもありますが、血液検査の食物アレルギー(即時型アレルギー)の結果と、好酸球性食道炎の原因となる食物(遅延型アレルギー)が必ずしも一致しないのが、この病気の診断の難しい点です。

治療方針について

好酸球性食道炎の治療の目標は、症状をなくすだけでなく、顕微鏡レベルで好酸球の炎症を完全に消失させ、将来の食道狭窄(リモデリング)を防ぐことにあります。

1. 薬物療法

・酸分泌抑制薬(PPIおよびP-CAB):第一選択薬として使用されます。胃酸を抑えるだけでなく、食道粘膜の炎症性サイトカインを直接抑え込む作用があるため、約半数の患者さんで症状と好酸球の浸潤が劇的に改善します。

・局所ステロイド嚥下療法:PPIが無効な場合に使用します。本来は気管支喘息で用いるステロイドの吸入薬(フルチカゾンなど)を、息を止めて「ごっくんと飲み込む」という特殊な方法で食道粘膜に直接擦りつけます。全身への副作用は少なく、極めて高い有効性を示します。

・生物学的製剤(分子標的薬):既存の治療で効果が不十分な難治例に対して、炎症の元凶となるサイトカイン(IL-4ならびにIL-13)の働きをピンポイントでブロックする注射薬(デュピルマブなど)が近年承認され、劇的な効果を上げています。

2. 食事療法

薬に頼らず、原因となる食物を特定して食事から完全に排除する治療法です。疑わしい食品(乳製品や小麦など)を一度すべて除去し、症状と内視鏡の所見が改善したのちほど、1種類ずつ再開して原因食品を突き止める「ステップアップ除去食療法」などがおこなわれます。ただし、長期間の厳しい食事制限が必要となるため、専門の医師や栄養士との綿密な連携が不可欠です。

3. 内視鏡的治療

すでに食道が硬く線維化し、狭窄を引き起こして食事が通らなくなっている場合には、内視鏡の先端から風船(バルーン)を出して、狭い部分を物理的に押し広げる「内視鏡的バルーン拡張術」をおこなう必要があります。

よくある質問(Q&A)

Q.好酸球性食道炎は「食物アレルギー」と同じですか?

A.広い意味ではアレルギーの一種ですが、一般的な食物アレルギー(食べて数分で蕁麻疹やアナフィラキシーを起こす即時型)とはメカニズムが異なります。食べてから数日かけてじわじわと炎症が起こる「遅延型アレルギー」の性質を持つため、血液検査のIgE抗体検査だけでは原因食物を正確に特定できないという違いがあります。

Q.治療を続ければ完治する病気ですか?

A.残念ながら、薬や食事療法で炎症をゼロに抑え込むことはできますが、アレルギー体質そのものが治るわけではないため、治療を中断すると高い確率で再発します。高血圧や糖尿病のように、症状がなくても薬や生活習慣の工夫によって「長期的にコントロールし続ける(寛解維持)」ことが必要な慢性疾患です。

Q.逆流性食道炎のように、放置すると食道がんになりやすいですか?

A.逆流性食道炎の慢性化(バレット食道)は食道がん(腺がん)のリスクを高めますが、好酸球性食道炎自体が食道がんの発生リスクを上昇させるという科学的な証拠は、現在のところ確認されていません。警戒すべき最大のリスクは、がんではなく「食道がカチカチに狭くなって食事がとれなくなること」です。

受診の目安

「肉やパンなどのパサパサした固形物が、胸の奥で引っかかる感じがする」「食事のたびに、食べ物を胃に流し込むための水が手放せない」「食事中に食べ物が詰まって苦しくなり、吐き出してしまうことが何度かある」といった症状があらわれた場合は、好酸球性食道炎の可能性が強く疑われます。

これらの症状を「よく噛んでいないせいだ」「ストレスで食道が細くなっているのだろう」と自己判断して長期間放置すると、食道の線維化が進行して元に戻らなくなってしまいます。特にアレルギー体質(喘息やアトピーなど)をお持ちの方で、飲み込みにくさや治りにくい胸やけを感じる場合は、速やかに消化器内科を受診し、生検(組織採取)を伴う精密な内視鏡検査をうけていただく必要があります。