大腸がん(便潜血陽性・体重減少)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

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大腸がん

大腸がん(便潜血陽性・体重減少)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

サマリー(時間がない方はこちらをどうぞ)

大腸がんは、長さ約1.5〜2メートルの消化管である大腸(結腸ならびに直腸)の最も内側の層「粘膜」から発生する悪性腫瘍です。発生メカニズムには、良性のポリープ(腺腫)が長期間を経て悪性化する「腺腫がん連鎖(adenoma-carcinoma sequence)」と、正常な粘膜から直接がん細胞が発生する「デノボ(de novo)発がん」の2つの経路が存在します。

初期段階では痛覚神経を刺激せず、出血も微量であるため、自覚症状は全くありません。がんが成長し、大腸の内腔を物理的に塞ぐようになると、便秘や下痢、便が細くなる、血便が出るといった症状があらわれます。発生する部位(右側か左側か)によって便の性状が異なるため、症状の出方に明確な違いがあるのが特徴です。早期に発見し、内視鏡で完全に切除することができれば高い確率で根治が期待できる一方、進行すると肝臓や肺への転移を引き起こします。40歳を超えたら、症状がなくても定期的な大腸内視鏡検査によるポリープの切除(先制医療)と客観的な評価をうけることが、命を守る最大の防衛策となります。

症状について

大腸がんの症状は、腫瘍が発生した「解剖学的な位置(右側結腸か、左側結腸・直腸か)」によって、病態生理学的に明確な違いがあらわれます。

1. 右側結腸がんの症状(盲腸・上行結腸・横行結腸)

小腸から大腸に入ったばかりの内容物は、水分を多く含んだ液状または泥状です。そのため、がんが大きく成長して腸の内腔が狭くなっても、便が通過しやすく、閉塞症状(便秘や腹痛)があらわれにくい傾向にあります。腫瘍の表面が崩れて出血しても、便と混ざって時間が経つため、肉眼では赤い血として認識できません。その結果、自覚症状のないまま持続的に出血し、進行した「鉄欠乏性貧血(動悸、息切れ、めまい、全身の倦怠感)」や、お腹のしこり(腫瘤触知)を契機としてようやく発見されるケースが多くみられます。

2. 左側結腸・直腸がんの症状(下行結腸・S状結腸・直腸)

大腸の後半部分では水分が吸収され、便が固形化しています。そのため、がんによって通り道が狭くなると物理的な通過障害が早期にあらわれます。

・便通異常:便秘と下痢を繰り返す、便の太さが鉛筆のように細くなる(便柱細小)。

・血便および粘血便:固い便が腫瘍の表面をこすって出血するため、便の表面に赤い血液が付着したり、赤黒い血が混ざったりします。直腸がんでは、粘液と血液が混ざったゼリー状の粘血便が出ることがあります。

・残便感・しぶり腹(裏急後重):直腸にがんができると、腫瘍そのものを「便がある」と脳が誤認し、排便後も常に便意が続く不快感が生じます。

病気の概要

人間の大腸の壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜(しょうまく)」という5つの層で構成されています(直腸の下部には漿膜が存在しません)。

大腸がんは、必ず最も内側の「粘膜」の上皮細胞から発生します。がん細胞が粘膜内、あるいはその下の粘膜下層までにとどまっている状態を「早期大腸がん」と定義し、粘膜下層を突き破って筋肉の層(固有筋層)より深くまで浸潤した状態を「進行大腸がん」と定義します。

この深さ(深達度)の評価が極めて重要になる理由は、粘膜下層の深部にはリンパ管や血管のネットワークが豊富に存在するためです。がんが粘膜下層の深く(一般的に1000マイクロメートル以上)に侵入すると、リンパ節や他臓器への転移リスクが急激に上昇し、内視鏡による局所的な切除だけでは根治が難しくなります。

病気の特徴

大腸がんの進行における最大の特徴は、解剖学的な血流の経路に従って遠隔転移を引き起こす点です。

1. 肝転移(血行性転移):結腸および直腸上部の静脈血は、すべて「門脈」という太い血管に集まり、直接肝臓へと流れ込みます。そのため、血管に侵入したがん細胞が最初に到達して定着する臓器は「肝臓」であり、大腸がんの血行性転移の中で最も頻度が高い部位となります。

2. 肺転移:直腸下部の静脈血の一部は、門脈を経由せず「下大静脈」を通って直接心臓に戻り、肺へと向かいます。そのため、直腸がんにおいては、肝臓への転移がないまま肺へ直接転移するリスクが結腸がんよりも高いという解剖学的な特性があります。

3. 腹膜播種と局所再発:がんが最も外側の漿膜を突き破ると、お腹の中にがん細胞が散らばります(腹膜播種)。また、漿膜を持たない直腸下部のがんでは、骨盤内の狭い空間で周囲の臓器(膀胱や前立腺、子宮など)へ直接浸潤しやすく、手術後の局所再発率が比較的高いことが知られています。

原因・背景

大腸がんの発症には、環境要因(生活習慣)と遺伝的要因が複雑に関与しています。

・環境要因:食生活の欧米化が最も強い影響を与えていると考えられています。牛や豚などの赤肉(レッドミート)や、ハム・ソーセージなどの加工肉の過剰摂取、高カロリー・高脂肪食、および食物繊維の摂取不足が大腸がんのリスクを上昇させることが疫学的に証明されています。また、過度の飲酒、喫煙、肥満、運動不足も独立した危険因子です。

・遺伝的要因:全体の数%程度ですが、特定の遺伝子変異によって大腸がんを極めて発症しやすい家系が存在します。大腸に無数のポリープが発生する「家族性大腸腺腫症(FAP)」や、DNAの修復機能に異常があり大腸がんや子宮内膜がんなどを若年で発症しやすい「リンチ症候群」などが代表的です。

・炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎やクローン病など、大腸に長期間の慢性炎症が持続する病態も、発がんの強力なリスク(colitic cancer)となります。

検査で分かること

大腸がんのスクリーニング、確定診断、およびステージング(進行度評価)のために、以下の検査を段階的かつ総合的におこないます。

・便潜血検査(免疫法)

大腸がんや大きなポリープからの微量な出血を捉えるためのスクリーニング検査です。2日分の便を採取し、目に見えない血液(ヒトヘモグロビン)が混ざっていないかを調べます。陽性となった場合は、出血の原因を確定するための精密検査(大腸内視鏡検査)が絶対に必要となります。

・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)および生検

大腸がん診断のゴールドスタンダードです。大腸の内部を直接観察し、病変の位置、大きさ、形態を評価します。NBIやBLIといった特定の波長の光を当てる画像強調観察や、数十倍に拡大する拡大内視鏡を用いて、表面の微細な細胞の模様(ピットパターン)や毛細血管の構造(JNET分類)を解析し、がんの深達度(内視鏡で切除できるか、手術が必要か)をミリ単位で精緻に診断します。疑わしい病変からは組織を採取(生検)し、病理検査で悪性であることを確定させます。

・造影CT・MRI検査

がんが大腸の壁をどれくらい深く突き破っているか、周囲のリンパ節が腫れていないか、肝臓や肺に転移していないかを全身的な視点から客観的に評価します。直腸がんの場合は、骨盤内臓器への局所浸潤をより詳細に評価するため、骨盤部MRI検査が必須となります。

・腫瘍マーカーおよび遺伝子検査

血液検査でCEACA19-9などの腫瘍マーカーを測定し、進行度や再発の指標とします。また、手術や内視鏡で採取したがん組織の遺伝子(RASBRAF、マイクロサテライト不安定性:MSIなど)を解析し、後述する抗がん剤の効きやすさを事前に評価する個別化医療がおこなわれます。

治療方針について

大腸がんの治療は、深達度(壁のどこまで入り込んでいるか)と、リンパ節および遠隔臓器への転移の有無(ステージ0〜IV)によって厳格に決定されます。

1. 内視鏡的切除(EMR・ESD)

がんが粘膜内、あるいは粘膜下層のごく浅い部分にとどまっており、リンパ節転移のリスクが実質的にゼロと判断される「早期大腸がん(ステージ0〜一部のステージI)」に対する根治治療です。粘膜の下に生理食塩水などを注射して病変を浮き上がらせ、金属の輪(スネア)で縛り取る内視鏡的粘膜切除術(EMR)や、専用の電気メスで広範囲に一層剥ぎ取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)がおこなわれます。大腸を温存できるため、身体への負担が極めて少ない治療です。

2. 外科的切除(手術)

がんが粘膜下層の深部以降に浸潤しており、リンパ節転移のリスクがある場合(ステージI〜III、および切除可能なステージIV)の標準治療です。がんが存在する腸管を適切な長さで切除し、同時にがん細胞が転移しやすい経路にあるリンパ節を根こそぎ切除(リンパ節郭清)して、残った腸を縫い合わせます。現在は、お腹に小さな穴を数カ所開けておこなう腹腔鏡下手術や、ロボット支援下手術が主流となっており、術後の回復が早まっています。直腸がんが肛門の極めて近くにある場合は、人工肛門(ストーマ)の造設が必要になることがあります。

3. 化学療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)

・術後補助化学療法:手術で目に見えるがんを取り切れた場合でも、再発リスクが高いと判断されたステージIIの一部およびステージIIIの患者さんに対し、目に見えない微小転移を根絶する目的で半年間抗がん剤を投与します。

・全身化学療法:肝臓や肺に無数の転移があり、手術での完全切除が不可能な場合(ステージIV)におこなわれます。複数の殺細胞性抗がん剤(FOLFOXやFOLFIRIなど)をベースとし、遺伝子検査の結果に基づいてがんの増殖や血管新生を阻害する「分子標的薬(抗EGFR抗体や抗VEGF抗体)」を上乗せすることで、生存期間の大幅な延長を図ります。また、MSI-H(マイクロサテライト不安定性が高い)という特定の遺伝子特性を持つ大腸がんに対しては、自己の免疫力を再活性化させる「免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダやオプジーボなど)」が劇的な効果を示すことが証明されています。

4. 放射線療法

主に直腸がんにおいて、手術前にがんを縮小させて人工肛門を回避するため(術前化学放射線療法)、あるいは骨転移などの痛みを和らげる目的で使用されます。結腸がんに対する放射線治療は一般的ではありません。

よくある質問(Q&A)

Q. 痔でよく血が出るのですが、大腸がんの出血と見分けることはできますか?

A. ご自身の目で便の血を見て、それが「痔からの出血」なのか「大腸がんからの出血」なのかを確実に見分けることは医学的に不可能です。「鮮血だから痔だろう」と自己判断して放置した結果、直腸がんの発見が手遅れになるケースが後を絶ちません。出血があった場合は、原因を特定するために必ず大腸内視鏡検査をうけていただく必要があります。

Q.便潜血検査が「陰性」だったので、大腸がんは無いと考えてよいですか?

A.陰性であっても、大腸がんやポリープが絶対に無いと断言することはできません。早期の大腸がんや、出血を伴わないタイプのがんは、便潜血検査では血液が検出されず「偽陰性」となることが多々あります。便潜血検査はあくまで出血の有無を調べるスクリーニングであり、病変の有無を直接確認するには大腸内視鏡検査が不可欠です。

Q.大腸ポリープを切除すると、大腸がんの予防になるというのは本当ですか?

A.大腸がんの大部分は、良性のポリープ(腺腫)が数年かけて徐々に遺伝子変異を蓄積し、悪性化(がん化)することで発生します。したがって、内視鏡検査でがんになる前の良性ポリープを発見し、その場で切除してしまえば、そこから大腸がんが発生する経路(腺腫がん連鎖)を物理的に遮断することができ、大腸がんの罹患率と死亡率を低下させることが科学的に証明されています。

受診の目安

早期の大腸がんは自覚症状が全くないため、「便に血が混じる」「便が細くなった」「便秘と下痢を繰り返す」といった明確な症状があらわれた時点では、すでにがんが大きくなり進行している可能性が高い状態です。

そのため、症状が出てから受診するのではなく、40歳を超えたら無症状の段階から、定期的に大腸内視鏡検査をうけ、ポリープがあれば切除しておくことが最も確実な予防策となります。

万が一、血便、原因不明の腹痛、お腹の張り(腹部膨満感)、意図しない体重減少、または健康診断で「貧血」や「便潜血陽性」を指摘された場合は、大腸がんの存在を強く疑うべき極めて重要な警告サイン(アラームサイン)です。これらの異常がある場合は、決して痔やストレスのせいだと自己判断せず、速やかに消化器内科を受診し、大腸内視鏡検査による客観的な評価をうけてください。