潰瘍性大腸炎(腹痛・下痢・血便)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

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潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎(腹痛・下痢・血便)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

サマリー(時間がない方はこちらをどうぞ)

潰瘍性大腸炎(UCUlcerative Colitis)は、大腸の最も内側にある粘膜に慢性の炎症や潰瘍が連続的に発生する原因不明の疾患であり、厚生労働省の指定難病に定められています。同じ炎症性腸疾患(IBD)であるクローン病と並び、比較的若年層での発症が多い傾向にありますが、小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症する可能性があります。主な症状は、血液や粘液が混じった下痢(粘血便)と激しい腹痛です。症状が強くあらわれる「活動期」と、症状が落ち着く「寛解期」を繰り返すという特徴を持ちます。現在の医学では完全に治癒させる原因療法は確立されていませんが、免疫の異常な反応を抑え込む薬物療法(5-ASA製剤や生物学的製剤など)が飛躍的に進歩しており、適切に治療を継続し粘膜の炎症を抑え込むこと(粘膜治癒)ができれば、健康な人と変わらない日常生活を送ることが十分に可能です。

症状について

潰瘍性大腸炎の症状は、炎症の範囲(直腸のみか、大腸全体か)と、炎症の強さ(軽症から重症)によって明確に異なります。

・血便および粘血便:最も特徴的かつ早期にあらわれる症状です。大腸の粘膜がただれて出血しやすくなり、便に赤い血が混じったり、ドロドロとした粘液と血液が混ざった便が出たりします。

・慢性的な下痢:大腸の粘膜が炎症を起こすことで、水分の吸収能力が著しく低下し、頻回の下痢を引き起こします。重症化すると1日に10回以上の水様便や血便が生じます。

・腹痛と裏急後重(しぶり腹):下腹部(特に左下腹部)の差し込むような痛みが頻発します。また、直腸に強い炎症があるため、便が少ししか出ないのに常に便意を感じてトイレに行きたくなる「裏急後重(りきゅうこうじゅう)」という不快な症状が続きます。

・全身症状:重症化すると、大量の出血と下痢による貧血や脱水、発熱、急激な体重減少、全身の倦怠感があらわれ、入院による強力な治療が必要となります。

病気の概要

消化管の中で、大腸(結腸ならびに直腸)の粘膜にのみ異常な免疫反応が起こる病態です。

病変の広がり方によって、直腸だけにとどまる「直腸炎型」、直腸から左側の大腸(下行結腸まで)に広がる「左側大腸炎型」、直腸から大腸全体に広がる「全大腸炎型」の3つのタイプに分類されます。

病態生理学的な最大の特徴は、直腸から発生した炎症が、口側(盲腸側)に向かって「連続して」広がるという点です。また、クローン病が腸の壁全体(全層)に深い炎症を起こすのに対し、潰瘍性大腸炎の炎症は、原則として腸の壁の最も浅い層である「粘膜」ならびに「粘膜下層」にとどまります。そのため、腸に穴が開く(穿孔)や、腸が狭くなる(狭窄)といった物理的な合併症は、クローン病と比較して頻度が低い傾向にあります。

病気の特徴

内視鏡(大腸カメラ)で観察した際、正常な大腸粘膜に見られる血管の網目模様(血管透見像)が消失し、粘膜全体が赤く腫れ上がり、少しこすれただけで出血する(易出血性)という特異な脆弱性を示します。進行すると、粘膜がえぐれて無数の潰瘍が形成されます。

また、炎症と再生が何年も繰り返されると、腸の壁の柔軟性が失われて土管のように真っ直ぐになる「鉛管像(えんかんぞう)」や、炎症を免れて残った粘膜がイボのように盛り上がる「偽ポリープ(炎症性ポリープ)」が形成されます。

医学的に最も警戒すべき点は、発症から10年以上経過した全大腸炎型の患者さんにおいて、長期間の慢性炎症を母地として大腸がん(colitic cancer:炎症性腸疾患関連がん)が発生するリスクが統計的に上昇することです。このがんは通常の大腸がんと異なり、平坦で見つけにくく複数箇所に発生しやすいという厄介な特性を持つため、定期的なサーベイランス内視鏡検査が不可欠となります。

原因・背景

自らの免疫システムが、自らの大腸粘膜を「異物」と誤認して攻撃してしまう原因は、単一の要素ではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

・遺伝的素因:家族内に炎症性腸疾患の患者さんがいる場合、発症リスクがやや高まることが分かっていますが、単一の遺伝病ではありません。

・環境要因:食生活の欧米化(高脂肪・高タンパク食)、ストレス、睡眠不足などが、発症や症状悪化の引き金になると推測されています。

・腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の異常:大腸内の細菌のバランスが崩れ、特定の細菌に対する免疫システムの過剰反応が炎症を持続させる大きな要因であると考えられています。

なお、喫煙(タバコ)に関しては、クローン病を劇的に悪化させる一方で、潰瘍性大腸炎においては発症リスクを低下させる、あるいは禁煙後に発症・悪化しやすいという特異な疫学的データが存在します。しかし、喫煙は他のがんや心血管疾患の致命的なリスクとなるため、治療目的での喫煙は決して推奨されません。

検査で分かること

確定診断、重症度の評価、ならびに感染性腸炎など他の疾患の除外のため、以下の客観的な検査を実施します。

・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)および生検

診断において最も重要かつ決定的な検査です。大腸粘膜の炎症の広がり(直腸から連続しているか)、血管透見像の消失、びらんや潰瘍の有無を直接観察します。同時に、複数の箇所から粘膜の組織を採取(生検)し、顕微鏡で「陰窩膿瘍(いんかのうよう)」などの特異的な細胞の変化を確認して確定診断を下します。

・便検査

便の培養検査をおこない、O157やカンピロバクターなどの病原菌による「感染性腸炎」ではないことを客観的に証明(除外)します。また、便中カルプロテクチンや便中免疫化学的潜血検査をおこなうことで、内視鏡を使わずに腸の炎症の強さを数値化し、治療効果のモニタリングに活用することができます。

・血液検査

炎症反応(白血球数やCRP)の上昇、下血に伴う貧血(ヘモグロビン低下)、および栄養状態(アルブミン低下)を評価します。

治療方針について

治療の目標は、症状がない状態(臨床的寛解)を達成し、さらに内視鏡で見ても粘膜の炎症が完全に消えている状態(粘膜治癒)を長期にわたって維持し続けることにあります。

1. 薬物療法(内科的治療)

・5-ASA製剤(メサラジンなど):軽症から中等症の基本薬です。大腸の粘膜に直接作用して炎症を抑え込みます。内服薬にくわえて、直腸やS状結腸の炎症に対しては、お尻から直接注入する座薬や注腸剤を併用することが極めて有効です。

・副腎皮質ステロイド:中等症から重症の活動期において、強力に炎症を鎮火させるために短期間使用します。副作用が大きいため、長期間の維持療法としては使用しません。

・免疫調節薬および生物学的製剤・JAK阻害薬:ステロイドが効かない、あるいは減量すると再燃してしまう難治例に対して使用されます。TNF-αやインターロイキンなどの炎症を引き起こす物質をピンポイントでブロックする点滴・皮下注射薬や、細胞内のシグナルを遮断する最新の内服薬を駆使し、深い粘膜治癒を目指します。

2. 血球成分除去療法(GCAP/LCAP)

血液を一度体外に取り出し、特殊なフィルターを通して炎症の原因となっている異常な白血球を吸着・除去し、綺麗になった血液を体内に戻す治療法です。薬の副作用が心配な方などに選択されることがあります。

3. 外科的治療(手術)

内科的治療をおこなっても激しい出血や下痢が治まらない重症例、大腸に穴が開いた(穿孔)、腸が極度に膨らんで毒素が回る(中毒性巨大結腸症)といった命に関わる緊急事態、あらかじめ大腸がんや前がん病変(異形成)が発見された場合には、大腸をすべて摘出する手術(大腸全摘術)が必要となります。

よくある質問(Q&A)

Q. クローン病との違いは何ですか?

A. 潰瘍性大腸炎は炎症が「大腸の粘膜のみ」に「連続して」起こるのが特徴です。一方、クローン病は口から肛門までの「全消化管」に「飛び石状(非連続的)」に炎症が起こり、炎症が腸の壁全体(全層)に深く及ぶため、腸が狭くなったり穴が開いたりする合併症を起こしやすいという明確な病態の違いがあります。

Q.症状がよくなれば、薬をやめてもいいですか?

A.自己判断での休薬は厳禁です。症状が完全に消えても、大腸粘膜の微小な炎症や免疫の異常反応はくすぶり続けていることが大半です。薬をやめると極めて高い確率で数ヶ月以内に再燃(症状がぶり返すこと)を引き起こすため、寛解を維持するための薬(5-ASA製剤など)は医師の指示に従って長期的に内服を継続していただく必要があります。

Q.食事で気をつけることはありますか?

A.下痢や腹痛が強い活動期は、腸に負担をかけないように消化がよく食物繊維や脂肪分の少ない食事を心がける必要があります。しかし、症状が落ち着いている寛解期であれば、厳密な食事制限は必要なく、バランスの良い食事をとることが可能です。ご自身のお腹の調子を崩しやすい食品を把握し、暴飲暴食や過度な香辛料、アルコールを控える工夫が大切です。

受診の目安

「便に赤い血が混じる」「ゼリー状の粘液に血が混ざった便が出る」「下痢と腹痛が数週間以上長引いている」といった症状があらわれた場合は、単なる胃腸炎や痔からの出血ではなく、潰瘍性大腸炎や大腸がんといった重大な大腸疾患が背後に隠れている可能性が高いサインです。

特に、若い世代で血便や頻回の下痢が続く場合は、炎症性腸疾患を強く疑うべき客観的な状況です。症状を自己判断で放置すると、大腸の粘膜の破壊が進行して重症化し、入院治療や手術が必要になるリスクが高まるため、速やかに消化器内科を受診し、大腸内視鏡検査による客観的な評価をうけてください。