大腸粘膜下腫瘍(便が細い・便秘がち・お腹が張る)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

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大腸粘膜下腫瘍

大腸粘膜下腫瘍(便が細い・便秘がち・お腹が張る)|東新宿駅前こばやし消化器内科|

サマリー(時間がない方はこちらをどうぞ)

大腸粘膜下腫瘍(SMTSubmucosal Tumor)は、大腸の表面を覆う粘膜よりも深い層(粘膜下層や固有筋層など)から発生し、粘膜を内側から押し上げるように盛り上がる病変の総称です。一般的な大腸ポリープや大腸がんが表面の粘膜細胞から発生するのに対し、粘膜下腫瘍は表面が正常な粘膜で覆われているのが特徴です。多くは無症状であり、大腸内視鏡検査などで偶然発見されます。脂肪の塊である「脂肪腫」のような完全に良性のものから、「神経内分泌腫瘍(NET)」や「消化管間質腫瘍(GIST)」のように転移や再発のリスクを伴う悪性度の高いものまで、さまざまな種類が存在します。そのため、発見された際には内視鏡検査や超音波内視鏡(EUS)、CT検査などを組み合わせて正確な診断をおこない、経過観察でよいか、内視鏡治療や外科的手術が必要かを見極めることが極めて重要になります。

症状について

大腸粘膜下腫瘍は、サイズが小さいうちは自覚症状を引き起こすことはほぼありません。表面が正常な粘膜で保護されているため、通常のポリープやがんのように便がこすれて出血することも少なく、便潜血検査でも陰性となることが大半です。

しかし、腫瘍が数センチ以上の大きさに成長すると、物理的な影響による症状があらわれます。腫瘍が腸管の内腔を塞ぐように大きくなると、「便が細くなる」「便秘がちになる」「お腹が張る(腹部膨満感)」といった通過障害の症状が生じます。まれに、腫瘍を先端として腸が腸の中に潜り込んでしまう「腸重積」を引き起こし、激しい腹痛や嘔吐を伴う腸閉塞状態になることもあります。

また、神経内分泌腫瘍(NET)やGISTなど一部の腫瘍では、大きくなると表面の粘膜が引き伸ばされて血流が不足し、中心部分に潰瘍が形成されることがあります。この場合は、潰瘍部分から出血が起こり、「便に血が混じる(血便)」や持続する出血による貧血(動悸や息切れ)といった症状があらわれるようになります。

病気の概要

大腸の壁は、内側から外側に向かって「粘膜」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜」という多層構造をしています。一般的な大腸がんは最も内側の「粘膜」から発生しますが、大腸粘膜下腫瘍はそれより深い「粘膜下層」や筋肉の層である「固有筋層」などから発生する腫瘍の総称です。

この「粘膜下腫瘍」という言葉は特定の病名ではなく、見た目の形態を表す状態の名称です。実際にどのような細胞から発生した腫瘍であるかによって、病態や悪性度は全く異なります。代表的なものとして、脂肪細胞が増殖した「脂肪腫」、平滑筋から発生する「平滑筋腫」、神経細胞に由来する「神経内分泌腫瘍(NET、旧称:カルチノイド)」、消化管の動きを調整するカハール介在細胞に由来する「消化管間質腫瘍(GIST)」、リンパ管が拡張した「リンパ管腫」、末梢神経のシュワン細胞に由来する「神経鞘腫」などが挙げられます。

病気の特徴

最大の特徴は、内視鏡で観察した際に「表面がツルツルとした正常な粘膜で覆われた、なだらかな山のよう(あるいは半球状)な隆起」として見えることです。通常のポリープとは発生するメカニズムや構造が異なるため、見た目からある程度の種類を推測することが可能です。

大腸で最も頻度が高い粘膜下腫瘍である「脂肪腫」は、黄色みを帯びており、内視鏡の鉗子(組織をつまむ器具)で押すとクッションのように柔らかくへこむ性質(クッション・サイン)があります。一方、「神経内分泌腫瘍(NET)」は直腸に多く発生し、表面がわずかに黄色や白色を帯び、硬く、中心部にわずかなへこみ(陥凹)を伴うことがあるという特徴を持ちます。「GIST」は固有筋層という深い層から発生するため、表面は周囲の粘膜と全く同じ色調であり、硬く、可動性に乏しいのが特徴です。

原因・背景

大腸粘膜下腫瘍の多くは明確な原因が解明されておらず、細胞の突然変異などによって偶発的に生じると考えられています。脂肪腫や平滑筋腫などの良性腫瘍は、組織が局所的に過剰増殖したものであり、食事や生活習慣などとの明確な因果関係は示されていません。

悪性化のリスクを持つGISTにおいては、c-kit遺伝子やPDGFRA遺伝子といった特定の遺伝子に変異が起こることで、細胞が増殖し続けるシグナルが止まらなくなることが発症の直接的な原因であることが分かっています。神経内分泌腫瘍(NET)についても大部分は散発性(たまたま発生するもの)ですが、ごく一部に多発性内分泌腫瘍症(MEN1型)などの遺伝性疾患が背景に存在し、複数の臓器に腫瘍が発生するケースも知られています。大半の患者さんにおいては、日常的な環境要因が直接の発症原因になることはないと考えられています。

検査で分かること

表面が正常な粘膜で覆われているため、通常の組織検査(表面を少し削り取って顕微鏡で見る生検)では腫瘍細胞まで届かず、確定診断がつかないことが多いのが診断の難しさです。そのため、以下の検査を組み合わせて総合的に評価します。

 

・大腸内視鏡検査:形態、色調、硬さ、表面の毛細血管の様子を観察します。鉗子で押して柔らかさを確認したり、腫瘍をつまんで動くか(ローリング・サイン)を確認したりすることで腫瘍の性質を推測します。

・超音波内視鏡検査(EUS):内視鏡の先端に超音波(エコー)の装置がついた特殊なカメラを用います。腸の壁を断層画像として詳細に観察し、腫瘍がどの深さの層(粘膜下層か固有筋層か)から発生しているか、内部がどのような状態(均一か、液体が溜まっているか)かを評価します。種類を鑑別し、治療方針を決定する上で最も重要な検査です。

・腹部CTMRI検査:腫瘍の大きさを正確に測り、大腸の壁の外にどの程度飛び出しているか、およびリンパ節や肝臓など他の臓器へ転移していないか(悪性かどうか)を全身の視点から評価します。

・深部生検(ボーリング生検):どうしても組織の確認が必要な場合、同じ場所を何度も深く掘るように粘膜を採取する手法をおこなうことがあります。

治療方針について

腫瘍の種類(良性か悪性か)、大きさ、発生している深さによって、治療方針は大きく3つに分かれます。

 

  1. 経過観察

超音波内視鏡などで「脂肪腫」や「リンパ管腫」などの完全な良性腫瘍と診断され、かつサイズが小さく無症状の場合は、治療の必要はなく定期的な内視鏡検査での経過観察とします。

  1. 内視鏡的切除(EMRESD

直腸などに発生した小さな(一般的に10ミリ未満)「神経内分泌腫瘍(NET)」で、腫瘍が粘膜下層という比較的浅い層にとどまっており、リンパ節転移のリスクが極めて低いと判断される場合は、内視鏡による切除(EMRESD)が検討されます。ただし、取り残しを防ぐため、通常のポリープ切除よりも深く削り取る高度な技術が必要となります。

  1. 外科的手術

GISTなどのように筋肉の層(固有筋層)深くから発生しているものや、サイズが大きいもの(一般的に2センチ以上)、悪性の疑いが強いもの、あるいは内視鏡では完全な切除が困難と判断される場合は、外科的手術によって腸管ごと腫瘍を切除します。悪性の場合、切除後の病理結果によっては分子標的薬による追加治療をおこなうこともあります。

よくある質問(Q&A)

Q.粘膜下腫瘍と言われましたが、これは「がん」ですか?

A.粘膜下腫瘍という言葉自体は「表面が盛り上がった形」を表す言葉であり、イコール「がん」ではありません。大半は脂肪腫などの良性ですが、一部にNETGISTといった悪性(転移や再発をする可能性がある)の腫瘍が含まれています。正確な種類を見極めるための精密検査が必須となります。

 

Q.ポリープのようにその場で切除してもらえないのですか?

A.一般的なポリープは表面の粘膜にあるためその場で切除できますが、粘膜下腫瘍は深い層に根を張っているため、不用意に切除すると腸に穴が開く(穿孔)危険性が非常に高くなります。そのため、超音波内視鏡などで深さや性質を正確に評価したうえで、安全な環境で計画的に治療をおこなう必要があります。

 

Q.良性と言われましたが、大きくなることはありますか?

A.脂肪腫などの良性腫瘍であっても、長い時間をかけて少しずつ大きくなることがあります。急激に大きくならないか、形がいびつに変化しないかを確認するため、医師の指示に従い、年単位での定期的な大腸内視鏡検査をうけていただくことが重要です。

受診の目安

大腸粘膜下腫瘍は無症状であることが多いため、便潜血検査などで異常を指摘された際や、40歳を超えて一度も大腸内視鏡検査をうけたことがない方は、スクリーニング(ふるい分け)として検査を検討してください。また、以前の検査で粘膜下腫瘍を指摘され、次回の検査時期の指示をうけている方は、症状がなくても必ず受診してください。

万が一、便が細くなった、便に血が混じる、お腹の張りが強くて痛みを伴うなどの症状があらわれた場合は、腫瘍が大きくなっている、あるいは表面が崩れて出血している可能性があるため、待たずに速やかに消化器内科を受診し、詳細な評価をうけることが推奨されます。