食道粘膜下腫瘍とは|新宿・東新宿駅前こばやし消化器内科

ヘッダー画像

食道粘膜下腫瘍

食道粘膜下腫瘍とは|新宿・東新宿駅前こばやし消化器内科

サマリー(時間がない方はこちらをどうぞ)

食道粘膜下腫瘍(SMT:Submucosal Tumor of the Esophagus)は、食道の表面を覆う粘膜よりも深い層(粘膜下層や固有筋層など)から発生し、粘膜を内側から押し上げるように盛り上がる病変の総称です。一般的な食道がんが表面の粘膜細胞から発生するのに対し、食道粘膜下腫瘍は表面が正常な粘膜で覆われており、その多くはゆっくりと成長する良性の「平滑筋腫(へいかつきんしゅ)」です。

初期の段階では自覚症状がなく、健康診断の胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で見つかることが多くあります。腫瘍が大きくなると、食道の内腔が狭くなり、食べ物が胸につかえる(嚥下困難)といった症状が現れることがあります。

確認しておきたいこと

  • 良性と悪性の見極め:食道では「消化管間質腫瘍(GIST)」などのリスクを持つ腫瘍がみられることもあるため、超音波内視鏡(EUS)などで種類と深さを評価します。
  • 経過観察か治療か:腫瘍の種類やサイズ、症状の有無により、経過観察、内視鏡的切除、外科的手術のいずれかが選択されます。

症状について

食道粘膜下腫瘍の症状は、腫瘍の「大きさ」と食道内腔への「突出の程度」によって異なります。

初期〜小サイズ時の症状(無症状)

  • 無症状:腫瘍の大きさが1〜2センチメートル程度の段階では、食道の通り道を塞ぐことは少なく、自覚症状がないことが多くあります。

進行時の症状(通過障害と圧迫症状)

  • 嚥下困難(えんげこんなん):腫瘍が3〜5センチメートル以上に成長すると、肉やパンなどの固形物を飲み込んだ際に、胸の奥(胸骨の裏側)でつかえるような感覚や、胃に落ちていかない停滞感が生じることがあります。さらに大きくなると、水分も通りにくくなることがあります。
  • 胸骨後部痛(胸の痛み):腫瘍が食道の壁を押し広げることで、食事とは関係なく持続する胸の奥の圧迫感や、鈍い痛みが現れることがあります。

頻度は低いですが、腫瘍が大きくなり表面の粘膜が引き伸ばされて潰瘍(粘膜のえぐれ)を形成した場合には、出血を起こすことがあります。これにより吐血や、血液が便に混じることで黒いタール状の便(黒色便)が出ること、それに伴う貧血(息切れや立ちくらみ)が進行することがあります。

病気の概要

食道の壁は、内側から外側に向かって「粘膜上皮」「粘膜固有層」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」という多層構造になっています(食道には、胃や腸の最も外側にある「漿膜」はありません)。

「粘膜下腫瘍」という名称は特定の病名ではなく、内視鏡で見た際に「正常粘膜の下に何かが埋まっているような盛り上がり」がみられる場合の総称です。実際にどのような細胞が増殖してできた腫瘍であるかによって、性質は異なります。

食道に多くみられる粘膜下腫瘍

  • 平滑筋腫:食道に発生する粘膜下腫瘍の約70〜80%を占める良性腫瘍で、筋肉の層(主に固有筋層や粘膜筋板)の平滑筋細胞からできます。胃や大腸では脂肪腫や神経内分泌腫瘍(NET)、GISTなどが多くみられますが、食道では平滑筋腫が多いことが特徴です。
  • その他:消化管の運動に関わるカハール介在細胞から発生し悪性化のリスクを持つ「GIST(消化管間質腫瘍)」、末梢神経の細胞から発生する「神経鞘腫」や「顆粒細胞腫」、リンパ管や血管の拡張である「嚢胞(のうほう)」「血管腫」などがあります。

病気の特徴

内視鏡で観察した際の見え方に、粘膜下腫瘍ならではの特徴があります。

通常の食道がんは表面がザラザラしていたり、ただれて出血していたりすることがありますが、粘膜下腫瘍は表面が周囲と同じ健康な色の粘膜で覆われた、なだらかな半球状の盛り上がりとして見えます。腫瘍の辺縁で、正常な粘膜のひだが橋を架けたように引き伸ばされて見える「架橋ひだ(bridging fold)」という所見が、食道平滑筋腫でみられることがあります。

  • 良性と悪性の鑑別:「良性の平滑筋腫」と「悪性リスクを持つGIST」は、表面からの見た目だけでは区別が難しいことがあります。GISTは食道では数%程度と比較的まれですが、肝臓などへの転移や、お腹の中への広がり(播種)に関係することがあるため、両者を確認することが診療上重要になります。

原因・背景

食道粘膜下腫瘍の多くは、特定の細胞に変化が生じて増殖したものであり、明確な原因は解明されていません。

生活習慣との関連

食道がん(扁平上皮がん)の発症には飲酒や喫煙が大きく関与しますが、食道の平滑筋腫などの良性粘膜下腫瘍については、これらの生活習慣との直接的な関連は確認されていません。

GISTの遺伝子変異

悪性リスクを持つGISTでは、c-kit遺伝子やPDGFRA遺伝子といった遺伝子に変異が生じることで、細胞が増殖し続ける状態になることが知られています。

遺伝性疾患との関連

ごくまれに、特定の遺伝性疾患(アルポート症候群を伴うびまん性食道平滑筋腫症など)を背景として、食道全体に平滑筋腫が多発する病態もあります。

検査で分かること

腫瘍が正常な粘膜の深い層にあるため、通常の組織検査(表面を数ミリ採取する生検)では確定診断が難しいことがあります。そのため、以下の画像検査を組み合わせて評価します。

主な検査方法

  • 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):病変の位置、大きさ、表面の粘膜の状態(潰瘍の有無など)を確認します。鉗子(組織をつまむ器具)で腫瘍を押して硬さを確認したり、腫瘍が動くかどうかを確認したりすることで、腫瘍の性質を確認する手がかりとします。
  • 超音波内視鏡検査(EUS):食道粘膜下腫瘍の評価において重要な検査です。胃カメラの先端に超音波(エコー)の装置がついており、食道の壁の断層画像を観察します。腫瘍がどの層(第2層の粘膜筋板か、第4層の固有筋層か)から発生しているか、内部のエコーの反射が均一か不均一かを確認します。平滑筋腫とGISTはどちらも第4層から発生することが多いため、内部構造の違いなどから悪性の可能性を評価します。
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA):GISTなどの悪性が疑われる場合、EUSの画像を見ながら腫瘍に細い針を刺し、細胞を採取する検査です。採取した細胞に染色(免疫組織化学染色)を行い、c-kitタンパクなどが陽性であればGISTと診断されます。
  • 造影CT・MRI検査:腫瘍が食道の壁の外側にどの程度広がっているか、周囲の気管や大動脈との位置関係、リンパ節や肝臓、肺などへの転移の有無(悪性の場合)を確認します。当院では必要に応じて、提携する高度医療機関と連携して実施します。

治療方針について

食道粘膜下腫瘍の治療方針は、超音波内視鏡などで評価した「腫瘍の種類(良性か悪性か)」「腫瘍のサイズ」「自覚症状の有無」によって、以下の選択肢に分かれます。

経過観察

  • 対象:EUSなどで「平滑筋腫」や「嚢胞」などの良性腫瘍と考えられ、サイズが小さく(一般的に3センチメートル未満)、症状がない場合は、年1回程度の内視鏡検査でサイズの変化を確認する経過観察が基本となります。

外科的手術(胸腔鏡下手術など)

  • 対象:腫瘍が大きく成長して嚥下困難などの症状がある場合、経過観察中にサイズが増大した場合、細胞診でGISTなどと診断された場合に検討されます。
  • 方法:良性の平滑筋腫や小サイズのGISTであれば、食道を温存し、外側から筋肉の層を切り開いて腫瘍だけを摘出する「腫瘍核出術(しゅようかくしゅつじゅつ)」が行われます。体への負担が少ない胸腔鏡を用いた手術が広く行われています。

内視鏡的切除(STERなど)

  • 方法:「粘膜下トンネル内視鏡的腫瘍切除術(STER:Submucosal Tunneling Endoscopic Resection)」という方法では、口から入れた内視鏡だけで食道の筋肉層にある腫瘍を摘出します。食道粘膜の下にトンネルを作って腫瘍に到達し、摘出後にトンネルの入り口をクリップで閉鎖します。体表に傷がつかず、適応となるサイズの腫瘍に対して行われることがあります。

よくある質問(Q&A)

食道がん(扁平上皮がん)とは違う病気ですか?
異なる病気です。一般的な食道がんは、食道の表面(粘膜)から発生し、飲酒や喫煙などを背景として周囲の臓器やリンパ節へ広がることがある腫瘍です。一方、食道の粘膜下腫瘍は深い筋肉の層から発生し、その多くはゆっくりと成長する良性の「平滑筋腫」です。性質も進行のスピードも異なります。
胃カメラのときに、普通のポリープのようにその場で切ってとれないのですか?
粘膜下腫瘍は深い筋肉の層(固有筋層など)に根を持っているため、通常のポリープのように金属の輪(スネア)で縛り取ると、食道の壁ごと切ってしまい、穴が開く(穿孔する)リスクが高くなります。食道に穴が開くと、心臓や肺がある空間(縦隔)に影響が及び「縦隔炎」につながることがあるため、不用意な切除は避ける必要があります。切除する場合は、STERや胸腔鏡手術など、穿孔を防ぐための環境と技術を用いた計画的な治療が必要です。
良性の平滑筋腫と診断されましたが、将来的にがん(悪性)に変化することはありますか?
平滑筋腫が悪性の「平滑筋肉腫」や「GIST」に変化することは、まれであると考えられています。ただし、良性であっても年単位でゆっくりとサイズが大きくなることがあり、食道を塞いで食事に支障が出た場合には切除が検討されます。良性と言われた場合も、医師の指示通りに定期的な胃カメラでサイズを確認することが推奨されます。

受診の目安

食道粘膜下腫瘍は初期には自覚症状がないため、40歳を超えたら、症状がなくても定期的に胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受けることが、早期発見の機会になります。

  • 肉やパンなどの固形物を飲み込むと、胸の奥で引っかかる感じがする場合
  • 食事の途中で胸が詰まって苦しくなる場合
  • 食事と関係なく、胸の奥に圧迫されるような鈍い痛みが続く場合

これらの症状がある場合は、粘膜下腫瘍が大きくなって食道を塞いでいる可能性や、他の食道の病変が関係している可能性があります。市販の胃薬で様子を見るのではなく、消化器内科で内視鏡検査による確認をご検討ください。

当院は東新宿駅徒歩30秒・新宿三丁目駅徒歩8分と、新宿エリアからアクセスしやすい立地です。症状や検査結果に応じて内視鏡検査をはじめとする各種検査をご提案し、必要に応じて連携する基幹病院へのご紹介にも対応しています。気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。