食道粘膜下腫瘍
食道粘膜下腫瘍
食道粘膜下腫瘍(SMT:Submucosal Tumor of the Esophagus)は、食道の表面を覆う粘膜よりも深い層(粘膜下層や固有筋層など)から発生し、粘膜を内側から押し上げるように盛り上がる病変の総称です。一般的な食道がんが表面の粘膜細胞から発生するのに対し、食道粘膜下腫瘍は表面が正常な粘膜で覆われており、その多くはゆっくりと成長する良性の「平滑筋腫(へいかつきんしゅ)」です。
初期の段階では自覚症状がなく、健康診断の胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で見つかることが多くあります。腫瘍が大きくなると、食道の内腔が狭くなり、食べ物が胸につかえる(嚥下困難)といった症状が現れることがあります。
確認しておきたいこと
食道粘膜下腫瘍の症状は、腫瘍の「大きさ」と食道内腔への「突出の程度」によって異なります。
初期〜小サイズ時の症状(無症状)
進行時の症状(通過障害と圧迫症状)
頻度は低いですが、腫瘍が大きくなり表面の粘膜が引き伸ばされて潰瘍(粘膜のえぐれ)を形成した場合には、出血を起こすことがあります。これにより吐血や、血液が便に混じることで黒いタール状の便(黒色便)が出ること、それに伴う貧血(息切れや立ちくらみ)が進行することがあります。
食道の壁は、内側から外側に向かって「粘膜上皮」「粘膜固有層」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」という多層構造になっています(食道には、胃や腸の最も外側にある「漿膜」はありません)。
「粘膜下腫瘍」という名称は特定の病名ではなく、内視鏡で見た際に「正常粘膜の下に何かが埋まっているような盛り上がり」がみられる場合の総称です。実際にどのような細胞が増殖してできた腫瘍であるかによって、性質は異なります。
食道に多くみられる粘膜下腫瘍
内視鏡で観察した際の見え方に、粘膜下腫瘍ならではの特徴があります。
通常の食道がんは表面がザラザラしていたり、ただれて出血していたりすることがありますが、粘膜下腫瘍は表面が周囲と同じ健康な色の粘膜で覆われた、なだらかな半球状の盛り上がりとして見えます。腫瘍の辺縁で、正常な粘膜のひだが橋を架けたように引き伸ばされて見える「架橋ひだ(bridging fold)」という所見が、食道平滑筋腫でみられることがあります。
食道粘膜下腫瘍の多くは、特定の細胞に変化が生じて増殖したものであり、明確な原因は解明されていません。
食道がん(扁平上皮がん)の発症には飲酒や喫煙が大きく関与しますが、食道の平滑筋腫などの良性粘膜下腫瘍については、これらの生活習慣との直接的な関連は確認されていません。
悪性リスクを持つGISTでは、c-kit遺伝子やPDGFRA遺伝子といった遺伝子に変異が生じることで、細胞が増殖し続ける状態になることが知られています。
ごくまれに、特定の遺伝性疾患(アルポート症候群を伴うびまん性食道平滑筋腫症など)を背景として、食道全体に平滑筋腫が多発する病態もあります。
腫瘍が正常な粘膜の深い層にあるため、通常の組織検査(表面を数ミリ採取する生検)では確定診断が難しいことがあります。そのため、以下の画像検査を組み合わせて評価します。
主な検査方法
食道粘膜下腫瘍の治療方針は、超音波内視鏡などで評価した「腫瘍の種類(良性か悪性か)」「腫瘍のサイズ」「自覚症状の有無」によって、以下の選択肢に分かれます。
経過観察
外科的手術(胸腔鏡下手術など)
内視鏡的切除(STERなど)
食道粘膜下腫瘍は初期には自覚症状がないため、40歳を超えたら、症状がなくても定期的に胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を受けることが、早期発見の機会になります。
これらの症状がある場合は、粘膜下腫瘍が大きくなって食道を塞いでいる可能性や、他の食道の病変が関係している可能性があります。市販の胃薬で様子を見るのではなく、消化器内科で内視鏡検査による確認をご検討ください。
当院は東新宿駅徒歩30秒・新宿三丁目駅徒歩8分と、新宿エリアからアクセスしやすい立地です。症状や検査結果に応じて内視鏡検査をはじめとする各種検査をご提案し、必要に応じて連携する基幹病院へのご紹介にも対応しています。気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。