バレット食道
バレット食道
バレット食道は、食道の粘膜が長期間にわたって胃酸や十二指腸液の逆流にさらされた結果、本来の食道の細胞(扁平上皮)が、胃や腸の細胞(円柱上皮)に置き換わった状態を指します。逆流性食道炎(GERD)が長期間続いた場合に生じることがある病態です。
バレット食道そのものが特定の症状を引き起こすわけではありませんが、背景にある胃酸の逆流による胸やけや、呑酸(酸っぱい液が上がってくる感覚)を伴うことが多くみられます。
バレット食道について知っておきたいこと
バレット食道という「粘膜の変化」そのものが、痛みや不快感を直接引き起こすことはありません。バレット食道に特有の症状というものは特にありません。
自覚される症状の多くは、バレット食道の背景にある「胃食道逆流症(GERD)」によるものです。
高齢の方などでは知覚が低下し、胃酸が逆流していても症状を感じない「無症候性バレット食道」のケースもあるため、症状の有無だけで病態を判断することは難しい場合があります。
食道と胃は、細胞のレベルで構造が異なります。
食道の表面は、熱いものや硬い食べ物の摩擦に耐えられるよう、何層にも重なった「重層扁平上皮」という白っぽい粘膜で覆われています。一方、胃の表面は、胃酸や消化酵素を分泌し、それに耐える機能を持つ「円柱上皮」という赤みを帯びた粘膜で覆われています。
通常、この2つの粘膜の境界線(扁平上皮・円柱上皮接合部:SCJ)は、解剖学的な食道と胃の境界(食道胃接合部:EGJ)と一致しています。しかし、胃酸の逆流が慢性的に続くと、食道下部の扁平上皮が酸の刺激により変化(ただれ・びらん)を受けます。この変化と修復が繰り返されるうちに、酸への防御反応として、食道の粘膜が「胃や腸と同じ円柱上皮」に置き換わって修復されることがあります。この細胞の性質の変化(化生)によって形成された粘膜領域を「バレット食道」と呼びます。
バレット食道は、粘膜が変化している長さ(範囲)によって2つのタイプに分類され、がん化のリスクを評価する際の指標の一つとなります。
バレット粘膜の長さが3センチ未満の短いものを指します。日本人のバレット食道の多くがこのタイプです。がん化のリスクはゼロではありませんが、LSBEと比較すると相対的に低いと考えられています。
バレット粘膜が全周性に3センチ以上連続して広がっているものを指します。欧米人に多くみられますが、近年は日本でも増加傾向にあります。SSBEと比較して、バレット食道腺がんが発生するリスクが高いことが報告されており、より頻度の高い経過観察が推奨されます。
本来の食道がんの多くは、飲酒や喫煙を背景に扁平上皮から発生する「扁平上皮がん」ですが、バレット食道から発生するがんは、胃や腸のがんと同じ性質を持つ「腺がん」です。バレット食道腺がんは、進行が比較的早い特性を持つことが報告されています。
バレット食道の形成には、食道への逆流が続く複数の要因が関係しています。
食道と胃の境界には、胃酸の逆流を防ぐための筋肉のバルブ(下部食道括約筋:LES)があります。加齢によってこの筋肉の働きが変化したり、胃の一部が横隔膜を越えて胸側に出てしまう「食道裂孔ヘルニア」がある場合、胃液が食道へ逆流しやすい状態になります。
かつての日本人はピロリ菌感染による萎縮性胃炎が多く、胃酸の分泌が少ない状態の方が多くみられました。衛生環境の改善と除菌治療の普及により、胃酸を豊富に分泌できる胃を持つ方が増えたことが、バレット食道が増加している背景の一つとして考えられています。
肥満による内臓脂肪の増加は、腹圧を高め、胃を圧迫して逆流に関係することがあります。高脂肪食は胃酸の分泌を促すとともに、LESを緩めるホルモンの分泌に関係します。喫煙や過度なアルコール摂取は、食道粘膜の防御機能や細胞の変化に影響する要因として知られています。
バレット食道の診断、長さの測定、早期がんの確認のため、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行います。
主な観察方法
バレット食道そのものを「元の扁平上皮に戻す」ことを目的とした薬は現時点ではありません。治療の目標は、「逆流による粘膜への影響を防ぐこと」と「がんが生じた場合に早期に発見・切除すること」の二つになります。
胃酸分泌抑制療法(薬物療法)
生活習慣の改善
「週に何度も胸やけがする」「酸っぱい水が喉まで上がってくる」「夜間に咳き込んで目が覚める」といった胃食道逆流症の症状が慢性的に続いている方は、内視鏡検査による確認が推奨されます。
これらの症状がある場合は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)による確認をご検討ください。
当院は東新宿駅徒歩30秒・新宿三丁目駅徒歩8分と、新宿エリアからアクセスしやすい立地です。症状や検査結果に応じて内視鏡検査をはじめとする各種検査をご提案し、必要に応じて連携する基幹病院へのご紹介にも対応しています。気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。