先日、日本消化器内視鏡学会が策定した「消化器内視鏡の洗浄消毒標準化にむけたガイドライン(第2版)」に、システマティックレビュー協力委員として携わる機会をいただきました。今回は、このガイドラインを通じて改めて感じたことを、コラムという形で書いてみたいと思います。
内視鏡検査で「見える部分」と「見えない部分」
患者さんが内視鏡検査を受ける際、目に見えるのは「検査そのもの」です。医師がどれだけ丁寧に、苦痛の少ない検査を行うか。病変を見逃さず、正確に診断できるか。ここは患者さんにとって最も気になる部分だと思います。
一方で、検査が終わった後、そのスコープがどのように洗浄・消毒され、次の患者さんのために準備されているかは、ほとんどの方の目に触れることがありません。しかし、この「見えない部分」こそが、内視鏡診療の安全性を根本から支えています。
今回のガイドラインで変わったこと
- エビデンスに基づく推奨度の明確化:各手順について、どの程度の科学的根拠があるかを推奨度・エビデンスレベルとして明記するようになりました
- 新型コロナウイルス感染症を踏まえた対策の追加:エアロゾル感染など、これまで想定が薄かったリスクへの対応が盛り込まれました
- スタッフ教育の重要性の明記:洗浄・消毒を行う医療従事者自身の知識と技術をどう維持するか、という視点が新たに章立てされました
- 複雑な構造を持つスコープへの対応強化:十二指腸スコープなど、構造上洗浄が難しい機種について、より具体的な手順が示されました
- 保管・乾燥・定期検査など運用面の具体化:診療時間外の緊急内視鏡の扱いなど、現場で判断に迷いやすい点にも指針が加わりました
2018年に発行された初版から約5年が経ち、その間に新型コロナウイルス感染症の流行や、海外での多剤耐性菌のアウトブレイク事例などを経て、内視鏡の再処理(洗浄・消毒)に関する知見は大きく更新されました。今回の改訂は、こうした変化を踏まえ、より実践的で、根拠に基づいた内容になっています。
当院での取り組み
当院では、内視鏡の洗浄・消毒工程において、自動洗浄消毒機を用いた高水準消毒を徹底しているほか、看護スタッフによる院内の環境整備にも力を入れています。
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前処置専用トイレの運用
大腸内視鏡検査では、医療安全の観点から院内での前処置(下剤の服用)を推奨しています。特に、これまで大腸内視鏡検査を受けたことがない方や、術後の患者さんについては、院内での前処置をお願いしています。その際には、前処置専用のトイレをご用意しています。快適に過ごしていただく目的もありますが、一番の理由は感染対策です。また、大腸内視鏡検査の前処置というデリケートな内容であることを考慮したうえでの運用です。
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検査後の清掃徹底
前処置専用トイレは、検査後の清掃を徹底しており、検査(リカバリー)後の患者さんにはご利用をご遠慮いただいております。
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院内設備の消毒徹底
リカバリーベッド、ロッカー、スリッパ、ドアノブ、前処置の薬液を服用いただく際に使用するデスクなど、細かい部分に至るまで消毒を徹底しています。
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内視鏡本体・処置具の洗浄消毒
内視鏡本体や処置具についても、メーカーの推奨事項および今回のガイドラインに沿った洗浄・消毒を行っています。
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患者エリア・スタッフエリア共通の環境整備
こうした環境整備は、患者さんが過ごされるエリアだけでなく、スタッフが働くエリアも同様です。院内全体を清潔に保ち、整理整頓を徹底することが、医療安全を支える土台になると考えています。
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スタッフ間での医療安全の共有
当院はセルフ受付を導入しており、業務の効率化にも取り組んでいますが、効率だけを優先しているわけではありません。医療安全については、スタッフ同士で日頃から話し合いを重ねながら、クリニックとしての体制を作り上げています。
患者さんに見える検査の技術だけでなく、見えないところにもきちんと目を配る。それが、安心して内視鏡検査を受けていただくための土台だと考えています。ガイドライン作成に携わった経験を日々の診療にも活かし、これからも安心して内視鏡検査を受けていただける環境づくりに取り組んでまいります。

